トップページ >>創造と反省の自作スピーカー >>2010〜2011年 >>2010年5月頃 (S-013) 創造と反省の自作スピーカー
FE103E 5管式バックロード
[発想] このホーンを、寸法内に入れ込むために、五回折り返しのホーンとしました。これが「5管式」の由来になります。 まず、前側に3本の音道を配置し、そして後ろに回った後、さらに2本の音道が加わります。 さらに、第一音道に次のような仕切りを入れて「VW型音道」とします。 「VW型音道」とは、音道の幅を縦横に広げる音道のことで、音道幅が一定の「CW型」と異なり以下のような利点を生み出すことができます。 ・音道の扁平率を低く設計できる。特に、スロート付近の扁平率は非常に重要で1:2以下にすることで重低音の伸びを確保できる。長岡式では「スワン」がVW型音道だと言える。 ・内部の低在波を分散できる。音道内部で発生するビンビンといった反響音を改善できる。 ちなみに、この5管式バックロードの音道の縦横寸法をグラフにすると下記のようになります。常に音道が正方形に近い(特にエネルギー密度が高いスロート付近において)のが分かりますね。 [工作] 本作は構造自体が複雑なので、その説明を。 下記の写真にあるのがバラバラの状態で、右から「バッフル板」「空気室、音道1〜3」「音道4〜5」になります。 これを右から順に、手前から重ねていくことでバックロードホーンの形になります。 完成です。(左が田中式BH、右が本作「5管式BH」) [試聴] 周波数特性は次のような感じです。 前例のない3.7mの長大な音道を持つバックロードなので、低音域は独特なものがありました。 音道が2〜3mの通常型バックロードでは、低音は「ゴゴッ」や「ブンブン」と鳴るのに対し、5管式バックロードは、「フワッ」とか「ユラッ」と言った感じに、軽やかにソフトに鳴ります。バスレフに近い鳴り方なのですが、軽々と低音が響くのはバックロードホーン譲りです。 さらに、通常型バックロードでは「ホーホー」「ボンボン」いう中低域の付帯音があるのですが、 音道3.7mの5管式バックロードホーンは、低域の癖が皆無なのです。 おそらく、管が長くなると共に付帯音の帯域も下がった(→気づきにくくなった)のだと思います。 中高音は、非常に明快で癖が感じられません。極少量の吸音材でバランスが取れました。 前回作製した「田中式バックロード」は、(考案者の意図とは異なり)管の響きが振動版に逆流したような付帯音・逆相感が感じられましたが、5管式バックロードでは、(通常のBHのように)明確なスロートを設けたことで、付帯音の排出・逆流防止ができたのだと思います。 目立った癖もなく総合的には上々だったのですが、やはりホーン長が長すぎたようです。低域の量感が不足しています。 イメージ的には、音がホーン出口まで辿り着かずに減衰してしまう感じでしょうか? そこで、5本の音道のうち、4本目が終わったところに穴を開け、 音道を3m前後としました。 改造後は、思ったより音に変化なし。ちょっと中低域のヌケが良くなったかもしれません。 今になって考えてみると、低音の量感はホーンの広がり率で決定されるので、ホーンを短くしたところで大差なかったのでしょう。そして、10cmフルレンジにとって3mも3.7mもホーン長として長すぎる事に変わりなく、結果として低音量感の向上にはつながらなかったのでしょう。 作製当時の日記は、こちらから。 [2010年03月07日] 「新スピーカー設計[その2]」 [2010年03月09日] 「新スピーカー設計[その3]」 [2010年03月11日] 「新スピーカー設計[その4]」 [2010年03月12日] 「新スピーカー設計[その5]」 [2010年05月04日] 「5管式バックロード完成直前!」 [2010年05月08日] 「5管式バックロード、完成!」 [2010年07月04日] 「木工作業 三本セット!」 [2010年07月04日] 「木工作業 三本セット!」 トップページ >>創造と反省の自作スピーカー >>2010〜2011年 >>2010年5月頃 (S-013) |