第17・18回の二回にわたって、Excelでのホーンを描き方を説明しました。
今回はホーンの設計についてなので、むしろ第14回の続きですね。
また、エクスポネンシャルホーンの式にあった「広がり係数m」の事ですが・・・
これは、ホーンの広がりを決定する定数なのです。
ここで、前回作成したExcelグラフの出番です。
今は広がり係数(広がり率・広がり定数)の値mは、1となってますが、ここの値を0.8〜1.2位の間で変えてみます。
mが小さいと、穏やかに広がるホーン
mが大きいと、急に広がるホーン
となったでしょうか。
もしならなければ、参照が上手く出来ているか再確認してください。
重ねて描くと、違いが分かりやすいですね。
このmの値は、ホーンの低音再生限界に関わってくる数値で、次の表のような関係があります。
ホーン広がり率 | 低域再生 |
小さすぎる |
超低域まで再生できるが、低音量感不足 気密性の高い部屋(鉄筋マンションなど)では好結果となることも |
適切
|
データ上でも聴感でも 最も低域が豊か・伸びやかに聴こえる |
大きすぎる |
迫力はあるが、重低音の表現に欠ける
低域が不足気味に感じる |
「では、どこが適正なの?」ということですが、
上表のようにホーンは広げすぎても低音がホーン内部を伝わらなくなり、
低音が出なくなってしまいます。
この音波の伝播限界を「ホーンのカットオフ周波数」と言います。
カットオフ周波数fcは以下の式で表されます。
カットオフ周波数 fc=m×c/4π
m=広がり係数
c=音速(約340[m/s])
π=円周率(3.14)
で表せられます。
例えば、m=0.8の時、カットオフ周波数fcは
fc=0.8×340/4π≒21.7(Hz)
まで、低音が再生できる事になります。
「え?21.7Hzとか凄いですね! CDの限界付近ではないですか!」
と思ってしまう値ですが、残念ながら現実は甘くないのです。
このカットオフ周波数は「ホーンの長さが無限大」の時を仮定していて、
現実のバックロードホーンのようにホーンの長さが2〜3m程度の場合は、再生限界もずっと狭いものになります。
この場合、次のような感じになります。
(参考:株式会社音楽之友社 「長岡鉄男のオリジナルスピーカー設計術 こんなスピーカー見たことないSupecial Edition[基礎知識編]」P.31)
実線で示されたのが、無限の長さを持つホーンの特性。
点線で表されたのが、短く途中で切られたホーンの特性。
このように、短い現実のホーンは理論値ほどの低音は再生できないのです。
「ならホーン長を3mと言わず、5m・10m…と長くすれば良いんじゃない?」
という考えもありますが、今度は気流抵抗と音速が問題になるのです。
現実のホーンは気流抵抗があるので、ホーンが長すぎると低音が消えてしまいます。
そして音速は340m/sであり、長すぎると中高音と低音のタイムラグが大きくなってしまいます。
そんな訳で、ホーン長は2〜3m(長くても4m程度)となるのです。
前置きが長くなりましたが、
私の(少ない)経験から言うと、
ユニット口径 | 推奨広がり率 m |
8〜12cm |
0.7〜1.0 |
13cm〜20cm |
0.6〜0.8 |
が良いと思います。
この広がり率は音質に直結する部分なので、できれば試作を繰り返して決定するのが良さそうです。
★[応用編]長岡公式との関係について★
これで、ホーンの形を決定する重要な値
スロート断面積(第15回参照)
ホーン長さ(第16回参照)
広がり係数
が決まりました。
あとは、これを箱の形に折り曲げて収納するだけです!
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