さて、バックロードホーンは大きく二つの部分に分けられます。
赤い部分が「空気室」
青い部分が「ホーン」
になります。今回は、ユニットが取り付けられる「空気室」の事を説明していきましょう。
空気室設計の要点として『スロート断面積』『空気室容量』があります。
○『スロート断面積』の決め方
『スロート』は『喉』の事で、ホーンの一番細い部分、つまりホーンの入り口を示します。
この断面積は、『ユニットの振動板面積』と『Q0(共振先鋭度)』から次の関係があるようです。
Q0の値 | 振動板面積に対するスロート断面積 |
0.3以上 | 75%以下 |
0.3〜0.2 | 70%〜85% |
0.2以下 | 80%〜100% |
例えば、FOSTEX製ユニットのFE126Eの場合
実効振動半径(a)=4.6cm
であるから、
振動板面積=4.6×4.6×π≒66.5(cm^2)
となるので、スロート断面積(「S0」とも表記)は、FE126Eは「Q0=0.25」であり、磁気回路はある程度強力なので、ここでは「80%」とすると・・・
スロート断面積 S0 =66.5×0.8=53.2(cm^2)
となります。
とはいうものの、理論的な意味もなく単なる経験則です。この付近の値ならOKでしょう。
実際には、50%〜100%まで幅広くとることが出来るようです。
○『空気室容量』の決め方
その前にホーンとユニットの『クロスオーバー周波数』について説明します。
次のグラフを見てみましょう。
(参考:株式会社音楽之友社 「長岡鉄男のオリジナルスピーカー設計術 こんなスピーカー見たことないSupecial Edition[基礎知識編]」P.31)
ホーンは低音を、ユニットは中音〜高音を受け持つのですが、この境目となる周波数が「クロスオーバー周波数」で「fx」と表記します。
ここの周波数は、
fx=10×S0/Va
S0=スロート断面積(cm^2)
Va=空気室容量(L)
で求まります。
例えば、スロート断面積S0が53.2cm^2の場合、
fx=(10×53.2)/Va
となります。
クロスオーバー周波数fxは、200Hz付近にするのが良いとされています。ということは先程の式を・・・
Va=10×S0/fx
として、「fx=200」を代入した方が実用的ですね。
つまり、先程のFE126Eの計算の続きをやると、S0=53.2だったので・・・
Va=10×53.2/200=2.66(L)
となるので、空気室容量は2.66(L)付近が適当という事が分かりました。
実際は、空気室を計算値より大きめに作って、小石や木片を詰め込むことで調整します。
例えば、計算値では2.66(L)必要だったFE126Eの場合だと、2.7(L)〜3.5(L)前後の空気室を用意する事になるでしょう。
このように、『スロート断面積』『空気室容量』を決めたのですが、これらの値を変化させるとどういった傾向の音になるか、次の表にまとめてみました。
|
スロート断面積 小さい |
スロート断面積 大きい |
空気室容量 小さい |
[欠点]ユニット背面の音が逃げにくく 歪みが増える
[利点]ユニットがホーンと直接接合されているので、ホーン鳴き(ホーホーという付帯音)が少ない。コンパクトに設計可能。非力なユニット向け。 |
[欠点]fx が高すぎるため、中低域が強く、モッサリとした音になる。
[利点]磁気回路が強く、ハイ上がりなユニットであっても、それをカバーするだけの中低音量感が得られる。 |
空気室容量 大きい
| [欠点]fx が低すぎるため、ホーンの必要性が薄れる。
[利点]バスレフ向けのユニットにも対応できる場合がある。(基本的にはBH向けユニット以外はオススメできないが) |
[欠点]ホーンが駆動できずに、ホーホー・ボーボーと勝手に鳴る。無駄に箱が大きくなる。
[利点]最も開放感に優れた音となる。フワッとした低音で、共鳴管に近い音かも。 |
これで、空気室に関することは一通り理解していただけたかと思います。
次回は、バックロードホーン型スピーカーの要、『ホーン』を説明していきたいと思います。
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