トップページ >>初心者の自作スピーカー講座 目次 >>第15回

初心者の自作スピーカー講座
第15回
BH型スピーカーを設計しよう
〜その2 (空気室編)〜

<<[第14回]へ戻る [第16回]へ進む>>

さて、バックロードホーンは大きく二つの部分に分けられます。
バックロードホーン図
赤い部分が「空気室」
青い部分が「ホーン」
になります。今回は、ユニットが取り付けられる「空気室」の事を説明していきましょう。

空気室設計の要点として『スロート断面積』『空気室容量』があります。


○『スロート断面積』の決め方
『スロート』は『喉』の事で、ホーンの一番細い部分、つまりホーンの入り口を示します。
この断面積は、『ユニットの振動板面積』『Q0(共振先鋭度)』から次の関係があるようです。

Q0の値振動板面積に対するスロート断面積
0.3以上75%以下
0.3〜0.270%〜85%
0.2以下80%〜100%

例えば、FOSTEX製ユニットのFE126Eの場合
実効振動半径(a)=4.6cm
であるから、
振動板面積=4.6×4.6×π≒66.5(cm^2)
となるので、スロート断面積(「S0」とも表記)は、FE126Eは「Q0=0.25」であり、磁気回路はある程度強力なので、ここでは「80%」とすると・・・
スロート断面積 S0 =66.5×0.8=53.2(cm^2)
となります。

とはいうものの、理論的な意味もなく単なる経験則です。この付近の値ならOKでしょう。
実際には、50%〜100%まで幅広くとることが出来るようです。


○『空気室容量』の決め方
その前にホーンとユニットの『クロスオーバー周波数』について説明します。 次のグラフを見てみましょう。
クロスオーバー周波数
(参考:株式会社音楽之友社 「長岡鉄男のオリジナルスピーカー設計術 こんなスピーカー見たことないSupecial Edition[基礎知識編]」P.31)
ホーンは低音を、ユニットは中音〜高音を受け持つのですが、この境目となる周波数が「クロスオーバー周波数」で「fx」と表記します。

ここの周波数は、
fx=10×S0/Va
S0=スロート断面積(cm^2)
Va=空気室容量(L)
で求まります。
例えば、スロート断面積S0が53.2cm^2の場合、
fx=(10×53.2)/Va となります。

クロスオーバー周波数fxは、200Hz付近にするのが良いとされています。ということは先程の式を・・・
Va=10×S0/fx
として、「fx=200」を代入した方が実用的ですね。
つまり、先程のFE126Eの計算の続きをやると、S0=53.2だったので・・・
Va=10×53.2/200=2.66(L)
となるので、空気室容量は2.66(L)付近が適当という事が分かりました。

実際は、空気室を計算値より大きめに作って、小石や木片を詰め込むことで調整します。 例えば、計算値では2.66(L)必要だったFE126Eの場合だと、2.7(L)〜3.5(L)前後の空気室を用意する事になるでしょう。

このように、『スロート断面積』『空気室容量』を決めたのですが、これらの値を変化させるとどういった傾向の音になるか、次の表にまとめてみました。

スロート断面積
小さい
スロート断面積
大きい
空気室容量
小さい
[欠点]ユニット背面の音が逃げにくく
歪みが増える

[利点]ユニットがホーンと直接接合されているので、ホーン鳴き(ホーホーという付帯音)が少ない。コンパクトに設計可能。非力なユニット向け。
[欠点]fx が高すぎるため、中低域が強く、モッサリとした音になる。

[利点]磁気回路が強く、ハイ上がりなユニットであっても、それをカバーするだけの中低音量感が得られる。
空気室容量
大きい
[欠点]fx が低すぎるため、ホーンの必要性が薄れる。

[利点]バスレフ向けのユニットにも対応できる場合がある。(基本的にはBH向けユニット以外はオススメできないが)
[欠点]ホーンが駆動できずに、ホーホー・ボーボーと勝手に鳴る。無駄に箱が大きくなる。

[利点]最も開放感に優れた音となる。フワッとした低音で、共鳴管に近い音かも。

これで、空気室に関することは一通り理解していただけたかと思います。 次回は、バックロードホーン型スピーカーの要、『ホーン』を説明していきたいと思います。




<<[第14回]へ戻る [第16回]へ進む>>

トップページ >>初心者の自作スピーカー講座 目次 >>第15回

inserted by FC2 system