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のーと 005
「インピーダンスと共振先鋭度 Q 」
更新.2012.01.28
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前回、ユニットに交流電圧を加える事で、共振周波数では逆起電力によって直流抵抗RDCがRmaxまで上昇することを説明しました。


インピーダンスのピークの大きさは「Rmax」で表せるのですが、
ピークの形は「共振先鋭度 Q」を使って表します。

これに関して、この図が参考になります。
インピーダンス曲線
(RDCは、しばしばREと表記されます。TSパラメータを扱う論文・技術資料ではREの方が一般的のようです。)

[参考]http://park8.wakwak.com/~hilo/audio/spktune/
[参考]http://park8.wakwak.com/~hilo/audio/spktune/messtep1.htm

ここで、まず Rx [Ω] を決めないといけません。
Rx は次の計算式で求まります。

RX

例えば、Rmax = 54[Ω]、RDC = 6[Ω]の時、
r0 = 54/6 = 9
Rx = √9 × 6 = 18 [Ω]

となります。


ここで求めたRxに従って、インピーダンス曲線との交点を上図のように調べます。
二つの交点の周波数を F1、F2 [Hz] とします。

後は、共振周波数 Fs [Hz] を含めた次の式で、 Qms が表せます。

Qms 機械的共振先鋭度



ここで、実際の例としてFE103EnのQmsを求めてみましょう。

FE103En
[参考]http://www.fostex.jp/products/FE103En

まず、RDCですが、これは公称インピーダンス(8Ω)の8割として考えます。
なので・・・
RDC = 8 × 0.8 = 6.4 [Ω]

ちなみに、RDC と 20Hzでのインピーダンス(グラフの左端)は異なる事が多いのに注意が必要です。もちろん、カタログにRDCの表記があればその値を使ってください。
グラフから、Rmax を見ると 48[Ω]といったところでしょうか。

これらの値から、r0 Rx を求めると、
r0 = 48/6.4 = 7.5
Rx = √7.5 × 6.4 = 17.28 [Ω]


なお、「√(ルート)」の計算機能が無い電卓の場合は、
2.5×2.5=6.25
2.6×2.6=6.76
2.7×2.7=7.29
2.8×2.8=7.89
2.9×2.9=8.41
3.0×3.0=9.00
と、計算して7.5に近い値となった「2.7」を「√7.5」とします。


Rx = 17.28 [Ω]が求まったので、これとインピーダンス曲線との交点 F1、F2 [Hz]を求めると…
F1 = 55 [Hz]
F2 = 130 [Hz]

と分かります。

インピーダンスのピークの位置は Fs = 78 [Hz]なので、
Qms = (78 × √7.5)/(130−55)= 2.81


こうやって、Qmsを求めてみると「Qmsがインピーダンス曲線の広がり」を表しているのが実感できますね。


さて、後はQesとQts(=Q0の求め方です。
ちなみに、FOSTEXのカタログに載っているのは、Qts(Q0)になります。

QesとQts (Q0)


先程の、FE103Enの例で説明すると、
r0 = 7.5、Qms = 2.81までは上記の計算で分かったので、
Qms = 2.81 ÷ ( 7.5 - 1 ) = 0.432
Qts = 2.81 ÷ 7.5 = 0.374


ちなみに、Qtsを(r0を使わずに) QmsとQesから求めると…
Qts = (2.81×0.432)/(2.81+0.432)= 0.374
となりました。数学的に等価な式なので当然の結果ではありますね。

さて、カタログを見てみると…
[FE103En] Q0 = 0.33
あれ?ちょっと違いますね(汗)

この位の差は、RDCの値や、インピーダンス曲線からRmax, F1, F2を読み出した時の誤差で変化してしまう範囲でしょう。


長い道のりでしたが、これでユニットの運動からQ0までの説明が終わりました。
次回は、Qtsなどの値として有名な「TSパラメータ」について簡単にお話します。

[参考]http://homepage3.nifty.com/w-taro/bondslab/ts-main01.html




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