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初心者の自作スピーカー講座
第34回
共鳴管スピーカーについて(2)



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共鳴管型スピーカーの基本設計は、前回に述べたとおりです。
今回は、その応用編です。

ユニットの位置
長岡先生のネッシーは管の端にユニットが付いていますが、このユニットの位置も共鳴管設計の肝だといえます。
端からの距離

良く知られているのが、「共鳴の腹に合わせてユニットを装着することで、その共鳴が潰される」という話です。
端からの距離


それでは、どのような変化が起こるか実際のデータで見てみましょう。
長さ2.4m、断面積255cm2の共鳴管に、TangBandの10cmフルレンジW4-927SAを入れたときの管開口部の周波数特性です。

[管端から 0cm]
端からの距離 0cm

[管端から 34cm] (減衰予想周波数)340÷0.34÷4=250Hz
端からの距離 34cm

[管端から 49cm] (減衰予想周波数)340÷0.49÷4=144Hz
端からの距離 49cm

[管端から 81cm] (減衰予想周波数)340÷0.81÷4=105Hz
端からの距離 81cm

こうして見ると、予想通りの周波数が減衰していることが分かります。しかし、依然としてピークは残ったままで共鳴が消失した訳ではなさそうです。おそらく、共鳴が潰れたというより、管端からの反射音との干渉が起こっていると解釈した方が良さそうです。

そして、聴感上での特性ですが余り芳しくありません。
今回はややハイ上がりなユニットを使用したのですが、ユニット装着位置を管端から離していくにつれて低音にディップ感が生じ、全体的に貧血気味の表情になってしまったのです。特に、管端から81cmも離してしまうと、低音量感の元となる100Hz前後が削り落とされてしまいました。
バスレフ型でも十分な低音が出るようなユニットを使用する場合は、これらのような管端から離したユニット位置が好ましいこともありそうですが、むしろ共鳴管以外の他方式を選択したほうが良いでしょう。



テーパー付き共鳴管
共鳴管にテーパーをつけることで、共鳴管の癖を抑えることができる…という話があります。
端からの距離 0cm
次に示すのは、長さ2.4mの共鳴管の広がり具合を変えたデータです。ユニットは、TangBandの10cmフルレンジW4-927SAで管端位置とします。

[1.0倍(255cm2→255cm2)]
端からの距離 0cm

[1.9倍(150cm2→285cm2)]
端からの距離 0cm

[4.6倍(75cm2→345cm2)]
端からの距離 0cm

これらを比較すると、より大きな広がりをもった共鳴管ほど、ピークディップが少なくなっていることが分かります。その一方で、「4.6倍」のように急な広がりをもつ共鳴管は100Hz以下の伸びが悪くなることも確認できます。
音としては、低域の不自然なピーク感は無くなり、穏やかな鳴りっぷりに変化します。「4.6倍」では100Hz以下の重低域の伸びがスポイルされる感じがあるものの、「1.9倍」では重低音の伸びは「1.0倍」と大差なく良好でした。

当たり前のことですが、共鳴管方式で低音増幅ができるのは「共鳴しているから」であって、(急なテーパーで)その共鳴を押さえ込めば低音も減少するのです。


その低域減少をダクトで補ったのが、いわゆる「TQWT」です。「TQWT」は「Tapered Quarter Wave Tube(テーパー付1/4波長管)」という意味ですが、一般的には下記サイトのように開口部をある程度塞ぎバスレフ動作を期待することが行われています。

TQWT
「 VIC's D.I.Y(管理人:Vic Ohashi氏)」

この共鳴管をダクトで塞ぐことに対しては賛否両論あるようですが、興味深い方式だといえるでしょう。



吸音材
長岡氏は吸音材を嫌いましたが、吸音材は共鳴音をコントロールできる重要なツールだといえます。
次の実験は、ALPINE DLS-108Xという10cmウーハーと共鳴管を組み合わせ、吸音材の量を増減させたときの開口部の周波数特性です。
共鳴管設計図

[吸音材 なし]
吸音材なし

[吸音材 充填後]
吸音材あり

今回は共鳴管体積の半分を埋め尽くすほどの大量の吸音材を使用したので、効果は一目瞭然ですね。
通常であれば、ここまで大量の吸音材を使うことは無いですが、少量を共鳴管壁面に貼り付けるなどで1kHz以上の帯域を吸音するのは大切なようです。




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