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初心者の自作スピーカー講座
第32回
サブウーハーの追加



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高音が満足できると今度は低音域が不満になります。
スピーカー完成当初から低音が十分出ていれば良いのですが、残念ながら低音不足のこともあります。その場合はスピーカーを一から作り直すことになってしまいます。しかし、頑張って作ったスピーカーなので簡単に諦められませんよね?

そんな時に活躍するのが「サブウーハー」です。
映画館で「ドドーン」と地を揺るがすような重低音を放出するアレですが、今回はピュアオーディオ用途なので、もっと上品で深々と低音を奏でる音作りを目指します。そういった意味で「スーパーウーハー」ではなく「サブウーハー(SW)」と表記します。

サブウーハーは市販品に多くの商品があります。しかし、数万円程度で買える安価なものはピュアオーディオ用途には不満の残るものです。
特に鮮烈でレスポンスの良い低音を奏でるフルレンジスピーカー・バックロードホーン型スピーカーとはミスマッチを起こしやすいです。かといって数十万出すというのも…

そこで自作です。
市販サブウーハーは次のような構成になっています。

市販サブウーハーの構成

単純に同じ構成を自作すれば良いのですが、残念ながら問題があります。市販サブウーハーはアンプとローパスフィルター(低域以外をカットする)が内蔵されています。自作するにあたり、このSW用アンプの入手が一手間必要なのです。
SW用アンプに国産品は無く、現状では下記の海外サイトから個人輸入をすることになります。
Parts-Express.com (英文サイト)
DAYTON Audio のpdfカタログ(英文)
これさえ入手できれば、後は通常型のバスレフ箱を作るだけです。バスレフではありませんがスパイラル・ホーン型の作例を挙げておきます。
自作スパイラル・ホーン・スピーカーのサブウーハー


海外通販に抵抗感を覚える人は、それ以外の方法をとることになります。
それは、箱を工夫することで重低音専用のスピーカーを作ることです。

有名なのは、次の三つの方式です。
市販サブウーハーの構成

(1)は、「ケルトン型」もしくは「ASW(アコースティックウーハー)型」と呼ばれます。前者は発案者のH.ロングによって命名され、後者は日立(当時はオーディオ業界に参入していた)が命名し、長岡鉄男氏などもその名前で呼んでいます。
構造としては、密閉箱の上にバスレフ箱を被せたようにも見えますし、バスレフ箱のユニット正面を箱で塞いだようにも見えます。バスレフのダクト音だけを利用し、それ以外を塞ぐ事で重低音専用の箱となります。

重低域はバスレフ型として、さらに下の超低域は密閉型としての動作となります。そのお陰かバックロードホーンとも渡り合えるスピード感のある低音を再生できます。
設計に関する公式は無いのですがバスレフ型に順ずる形として設計できます。コツとしては、下の密閉箱容量を大きめ(普段の2〜3倍?)とし、上側のバスレフ箱容量も若干大きめ(通常の1.5〜2倍?)とするようです。ダクトの共振周波数は、余り低くしすぎると低域不足となるのでユニットのf0の若干下ぐらいが良いと思います。

作例を以下に示します。
超低音の追加|オーケストラ再生のオーディオ
ASW-1603 ひょせんの「ホームシアターのすすめ」


(2)は「アクースティマス型」もしくは「PPW(プッシュプルウーハー)」と呼ばれます。前者はBOSEが命名したものですが、長岡氏はその発売以前に「PPW」と命名したと主張しています。

構造として(1)の密閉部にもダクトが付いただけなのですが、動作は大きく変わります。ユニットは上下に逆相の音を放つので、もし二本のダクトが同一の共振周波数なら音は出ません。
ここで、下のダクトの共振周波数を高め(80Hz)にとり、上のダクトを低め(40Hz)にしたとします。500Hz程度の中低域では両者とも共振しません。80Hz付近では下のダクトが共振しますが、上のダクトは共振せず密閉箱と等価の働きをします。40Hz付近では上のダクトが共振しますが、下のダクトは単なる通気口としての役目を果たします。ただ、二本のダクトの境目である(60Hz付近?)では双方のダクトが逆相として働くことや、最低域(30Hz以下)では双方のダクトが空振りしてしまう欠点があります。
実際の作製では、片方のダクトは単なる空気抜き(共振周波数は非常に高い)に設定する事もあるようです。

作例を以下に示します。
DRW-1205 ひょせんの「ホームシアターのすすめ」


(3)は「DRW(ダブルレゾナンス・ウーファー)」と呼ばれます。ASWのダブルバスレフ版といった感じでしょうか。
ダブルバスレフ自体設計法が確立していないので、設計法は不明です。

作例を以下に示します。
DRW-2001T ひょせんの「ホームシアターのすすめ」


[使うユニット]
長岡氏を含んだ作例では、フルレンジを含んだ様々なユニットが使われています。
しかし、作りやすさを考えた時は次のような要点があると思います。

・メインスピーカーと能率が等しい〜高いこと。並列接続にして能率を稼ぐ事もOK。
・f0が低ければより良い。
・フルレンジよりウーハーの方が成功しやすいかも。



さて、長かった「初心者のスピーカー講座」もこれにて完結…といきたいところですが、
今まで話してきたのは机上の事だけです。

そこで、実際にカノン5Dがスピーカーを作る過程を通して、より身近にスピーカー作りを体感してもらおう…
ということで、「実践編」をお届けしたいと思います!


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