それでは、作ったバックロードホーンの設計図を再び見てみましょう。
前回までは適当にホーンの長さを適当に測りましたが、今回はしっかりはかります。
その前に、1/10サイズでは測りにくいので、もう少し大きなサイズの図に描き直しても良いと思います。
縮尺は1/5ぐらいが適当でしょうか。ちなみに、15mm厚合板は1/5縮尺だと3mmです。
それでは、測ります。ここからは、上の部分を拡大した図を用います。
他の部分も同様です。
さて、「青線で描かれた直線部分」と「赤線で描かれた曲線部分」に分けます。
直線部分はそのまま測りますので簡単です。
問題は赤線の部分で、様々な測定方法があるので、ここで紹介する方法もその内の一つです。
とりあえず、これは半円なので、
(直径×π)÷2
で長さが求まりますね。さて、ここでは
半円の直径⇒『前のホーン高さ(板と板の間隔)』となります。
例えば上の場合、
第一音道(ホーンの始まりから数えて1番目の所の音道)の長さは20.0cm
そして、@の長さ。第一音道のホーン高さは4.5cmであったので、これを直径に使います。
よって、@=4.5×3.14÷2≒7.1cm
第二音道の長さは7.0cm
同様に、Aの長さは、A=5.5×3.14÷2≒8.6cm
第三音道の長さは5.0cm
同様に、Bの長さは、B=6.1×3.14÷2≒9.6cm
とまあ、こんな感じで開口までカウントしていきます。
これで、各場所の(割と)正確なスロートからの距離と、その場所でのホーンの高さの測り方は理解していただけたとして、
再びExcelのお世話になります。
とはいっても、それほど難しくなく「スロートからの距離」「ホーン高さ」を表にまとめていきます。
それでは、まず今まで使ってきたExcelグラフを再び開きます。
そして、その左隣に新しい「長さ」と「(ホーン)高さ」の表を作ります。
始めに書き込むのはスロート(つまり長さ0)における音道の高さである、4.5cm
次に、第一音道が終点での「長さ」と「高さ」なのですが、高さは同じ4.5cmで、長さは20cmになるのですが・・・
単に20cmと記入するのでなく、『F2(つまり、一つ前のポイント)』から20cmとして書くため、「=F2+20.0」と計算式を記入します。
計算式で記入したからといって、値が違くなるわけではないのですが、後との統一性からこのようにしました。
そして、今度は高さ。これはスロートとそのままで「4.5cm」ですね。
そして、音道はUターン。図中の@の部分に相当しますね。
ここのスロートからの長さは、「ここまでの長さ」と「前の音道の高さ×3.14÷2」の和になります。
値を直接代入しても良いのですが、セルの参照を使った方が、後での調整が楽です。
ここからは、次の第二音道に入るので、第二音道の高さである5.5cmを記入します。
そして、第二音道の長さは、7.0cmなので、「ここまでの長さ」+「7.0(第二音道の長さ)」
そして、音道の高さは一定なので、5.5のままですね。
AのUターン部分です。@のUターンとやる事は同じです。
後は、ホーン開口まで同様の繰り返しです。
そうすると、「スロートからの距離」と「音道の高さ」の表が完成します。
私の場合、こんな感じになりました。もちろん、検証・測定する箱によって値は変わってきます。
<クリックで拡大>
ちなみに、今回の設計では用いませんでしたが、ホーンがL字に90°折れ曲がっている時は、U字の半分ということで・・・
『前の音道の高さ×3.14÷4』
で求まります。
ここまでくれば、あと一息です。
ホーンの曲線をグラフにするために、第18回で説明したのと同じように、
ドラッグで今回作った表を範囲指定した後、グラフウィザードを使用してグラフを作成します。
<クリックで拡大>
美しいホーンの形になってますねぇ〜。
ただ、これでは理想とした形と近いかよくわかりません。そこで、一つのグラフの中に、設計時に利用した理想のホーンのデータを書き加えます。
まず、グラフのどれか一点をクリック。
<クリックで拡大>
次に右クリックをして、『元のデータ』をクリック。
<クリックで拡大>
今回は、「データ範囲」でなく『系列』を利用します。
<クリックで拡大>
系列(つまりグラフの線)を追加するので、『追加』をクリック
<クリックで拡大>
そうすると、系列2が現れるので、x軸の値を決めます。
<クリックで拡大>
いきなり表示が小さくなりますので、驚かないように。横長の『元のデータXの値』という表示になります。
ここで、BH設計の参考に用いた理論曲線の長さ(つまりここではA列)をドラッグで選択します。
3mまで表は作りましたが、設計したホーンの長さに合わせて必要な所まででOKです。
<クリックで拡大>
Y軸も同様に選択します。
<クリックで拡大>
x軸の時と同様ですが、「断面積」ではなく『高さ』の列を選択する事に注意してください。
<クリックで拡大>
これで、完成です。実はこれでも乱雑に設計した方なのですが、キレイに一致していますね。もちろん、丁寧に設計すればさらなる成果も期待できますね。
<クリックで拡大>
もちろん、これでOKなのですが、ちょっと見難いので・・・、グラフの種類を変更します。
理想曲線のグラフ上で、左クリックの後、右クリック。『グラフの種類』を選択します。
<クリックで拡大>
理想曲線を示すには、『平滑線』がオススメです。
<クリックで拡大>
実際の音道曲線も同様に、『ポイント+折れ線』のグラフに変更するとこんな感じになりますね。
ようやく、バックロードホーンの設計は終了です。お疲れ様でした。
始めは大変ですが、慣れれば手早く出来るようになるので、実際に制作せずとも設計してみるだけで楽しいものです。
今回は、簡単な折り返しの音道取り回しのBHを設計しましたが、「D-37型」や「スワン型」といった複雑なホーン設計も基本は同じです。
考えた音道の形を描く
→理論通りになるよう寸法を記入
→寸法に合わせて描き直す
→新しい寸法を記入
→新しい寸法に合わせて描き直す
→・・・
で、設計したのを、Excelを使って検証するのです。
この講座では、エクスポネンシャル曲線に近いホーンを作る事を目的としました。
しかし、メーカー説明書や出版されてる設計図を、今回紹介した方法で検証すると、大きく理論曲線から外れていることも少なくありません。
エクスポネンシャル曲線はあくまでも基本であり、応用的にはそこから離れた曲線が最適なのかもしれません。
ただ、これらは経験もしくは複雑な理論に基づく範囲だと思うので、ここでは『エクスポネンシャル曲線に従う』という基本に忠実な作り方を紹介する事にしました。
(まあ、私もそれ以外知らないわけですしw)
次回は、オマケの1回。
理想曲線に近づくための『斜め音道』を採用した作例を紹介します。
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