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初心者の自作スピーカー講座
第13回
バスレフ型スピーカーを設計しよう
〜その3 (実践編)〜

更新前ver (2011.08.18以前)

さてさて、今度は実際に設計してみましょう。
今回は、FOSTEXの12cmフルレンジユニット「FE127E」(現在、在庫限り)を例に挙げて説明していきましょう。
FE127E
(参考:「FOSTEX COMPANY」)

バスレフ型スピーカーの三大要素
『箱の容量』『ダクトの断面積』『ダクトの長さ』の決定


○箱全体の容積
結構自由に決められますが、一応、次の表を目安にすると良いでしょう。  
ユニットの公称口径目安の箱容量(L)
8cm3〜6
10cm5〜10
12cm6〜12
16cm10〜40
20cm20〜60

幅広い容積が選べるのですが、やはり標準箱の容積(FE127Eの場合10L)を基本とすることになります。
この箱容量はとても大切な値で、大きすぎても小さすぎても低音再生が難しくなってしまいます。

そして、完成後に容積を小さくする事は、適当な物を箱の中に詰め込むことで可能です。しかし、箱を大きくする事はできません。
そう考えると、小さめより若干大きめの箱を作った方がよいとも考えられますね。


○ダクトの断面積
これは、振動板面積の10%〜50%で決めますが、実際の所フルレンジスピーカーでは
小口径(8〜12cm)50%〜20%
大口径(16〜20cm)30%〜10%
とすることが多いようです。
そして、ユニットの磁気回路が強力な時は大きめに設定します。

FE127Eを例にとると・・・
実行振動板半径が4.6cmであるから
振動板面積は半径×半径×3.14で求まりますね。
振動板面積=4.6×4.6×3.14=66.44(cm^2)

FE127Eは12cm口径なので、ダクト断面積は振動板面積の30%位に設定しましょうか。
66.44×0.3≒20(cm^2)
となり、ダクト断面積は20(cm^2)が適切だと分かります。

○ダクトの長さ
これは、前回示した計算式を用いて出します。

共振周波数 f =共振周波数(Hz)
  S =ダクトの断面積 (cm^2)
V =箱の容量 (L)
l =ダクトの長さ(cm)
r =ダクト半径(cm)
フルレンジスピーカーの場合、共振周波数はカタログに描いてある最低共振周波数(f0)付近の値に設定するようです。
この共振周波数をどの位に設定するかは、設計意図によるもので
低音の量感を優先する場合は、若干高めに
低音の伸びを優先する場合は、若干低めに
設定します。

この辺は経験に頼る値でもあるので、二種類のダクト長を実験できるスピーカーシステムを作るのも自作ならではの楽しみです。



これで、バスレフ型で重要な『箱の容量』『ダクトの断面積』『ダクトの長さ』は決まりましたね。後は、このダクトをどのような形にして、どこに配置するかです。

その他、ダクトの設計法

○ダクト断面の形
バスレフダクトの形
標準箱を含め、多くの作例が『円管』を用いた、断面が円のダクトを使用していますが、断面積が同じなら『楕円』でも『長方形』でも良いのです。
実際の所、作りやすさを優先して、断面が『長方形(正方形)』のダクトがオススメです。これなら木材で簡単にダクトを作る事ができますね。
そして、同じ断面積なら縦横は『3.5×3.5』でも『3×4』でも構わないのですが、『1×12』『0.5×24』のように極端に長細いダクトだと予測値とズレた動作をしがち なので、避けたほうが良いでしょう。


○ダクトの位置
次に、ダクトの位置を考えます。
まず、前後のどちらにダクトを設けるか決めましょう。

ダクトの位置長所短所
直接放射されるので、量感スピード感に優れる
理論的に正しい位相となる
ダクトから発生する中高音の雑音が聴こえやすい
後ろダクトから発生する中高音の雑音が聞こえにくい間接的になるので、量感スピード感に劣る
ダクトからの空気を妨げないため壁との距離が必要

それぞれの長所短所はこんな感じです。
ちなみに、ダクト位置を前とするのが自作スピーカーでは多数派のように感じます。


次は、2つの例を見てみましょう。
ダクト位置

左側の方が、スピーカー箱全体の空気を使っているように見えて良さそうですが…
○ダクトからユニットの距離が長く、位相的に好ましく無い
といった問題があります。

では、右側はどうでしょうか。今度は
○箱の一部分の空気しか、ダクトの動作に利用できない
○ダクトから漏れる(発生する)中高音(=雑音)が目立ちやすい
といった問題があるようです。

では、どこに設定すればよいかというと、次のような経験式があります。

2.5a<L<4a
L=ユニット中心とダクト開口中心の適当な距離(cm)
a=振動板半径(cm)

これを、a=4.6(cm)のユニット「FE127E」で考えると…
ユニット〜ダクト間の距離L(cm)は、
2.5×4.6=11.6(cm)より長く
4 ×4.6=18.4(cm)より短い

場合が適当となりますね。

どうでしょうか。意外とユニットの近くにダクトが来ていると思います。
ただ、これは経験から編み出した「経験式」なので、やはりダクトの位置は個人の裁量にお任せされることになります。


バスレフ型スピーカー設計の主要点はこれで終わりです。
あとは、自分のアイディアと工夫でやってみましょう。
そして、実際作ってみないと分からない事も多く、経験者でも短めにダクトを作り、作製後に延長して聴感上ので決めることが多いといいます。




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